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【極付幡隨長兵衛】平成31年1月 新橋演舞場(昼の部)

極付 幡隨長兵衛(きわめつき ばんずいちょうべえ)

実在した侠客、幡随院長兵衛が主人公。江戸時代の「旗本奴」と「町奴」の対立がベースにある物語で、海老蔵が演じるのは「町奴」の長兵衛です。


写真提供:松竹株式会社

 

旗本奴と町奴

旗本奴とは、侍出身のならず者のこと。江戸時代は戦がなかったので、活躍の場を失った侍たちの中には、憂さ晴らしのように集団で町に出て、悪さをする者もいました。彼らは旗本奴と呼ばれ、庶民から煙たがられていました。この旗本奴に対抗していたのが、町人出身の侠客=町奴です(別称:男伊達)。町奴の中にも悪さをする者はいましたが、旗本奴から庶民を守っていたため、強きをくじき弱きを助けるヒーローとして人気がありました。

 

冒頭は「劇中劇」

この作品は、「歌舞伎が上演されている芝居小屋で、旗本奴が悪さをする」という場面から始まります。劇中劇の内容は、「極付幡隋長兵衛」の筋には全く関係ありませんので、深く考えず、昔の芝居小屋の雰囲気をお楽しみください。


『極付幡随長兵衛』(明治24[1891]年6月 歌舞伎座)歌川国貞[3世]M749-8 都立中央図書館特別文庫室所蔵

 

町奴の意地

芝居小屋で、旗本奴と町奴の長兵衛(海老蔵)が対立。
後日、旗本奴の親分=水野十郎左衛門は、「仲直りのための宴会をする」と言って、長兵衛を自宅に招きますが、実はこれ、長兵衛を殺すための作戦!長兵衛はそれを承知で水野の屋敷に向かうことにします。
長兵衛の「人は一代、名は末代」というセリフは、「肉体は1代で滅びるが、その名は後世まで残る」という意味。逃げたら男の恥になる、と死ぬ覚悟を決め、妻・息子・子分たちに分かれを告げて出発します。息子の長松を演じるのは、堀越勸玄。父子の別れの場面は涙を誘います。


写真提供:松竹株式会社

 

湯殿の長兵衛

お芝居のラストは水野家の湯殿=風呂場となります。水野たちはわざと長兵衛の着物に酒をこぼし、「風呂に入ってください。その間に着物を乾かしておきます。」と申し出るのですが、さて、その真意とは・・・?
この作品は、江戸時代の初め頃という設定です。当時は自宅には風呂はなく、湯屋に通うのが普通でした。水野は悪さをしていても、身分が高く裕福な侍であることが分かるところです。舞台となる湯殿が蒸し風呂(足だけ湯に浸かる)であることにもご注目。今日のように湯船につかる入浴スタイルが始まったのは、江戸末期以降だと言われます。

 

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▼豆知識

・坂田金平(さかたきんぴら)

昔話で知られる金太郎(坂田金時)の息子で、力自慢の少年。金平ごぼうの語源にもなった人です。
冒頭の劇中劇で上演されているのは、この坂田金平が活躍する「公平法問諍」(きんぴらほうもんあらそい)。後に歌舞伎の荒事(荒ぶる演技)の成立に影響を与えた作品でもあります。

 


(「坂田金平」ARC所蔵 arcUP5038)

 

・実在の人物がモデル

幡隨院長兵衛も水野十郎左衛門も実在した人物です。「侠客の元祖」と言われる長兵衛は、侍の家の生まれとも言われ、父の死後、浅草で口入れ屋(肉体労働者の派遣業)を営んでいたそうです。
水野十郎左衛門は、織田信長や徳川家康の血を引く名門の侍ですが、旗本奴の中でも特に暴れ者として有名。旗本奴にはいくつかチームがあり、水野は「大小神祇組(だいしょうじんぎぐみ)」というチームを作っていましたが、この作品の中では「白柄組(しらつかくみ)」のリーダーという設定です。 

 

◇ 夜の部『俊寛』のレッスンを読む

夜の部『春興鏡獅子』のレッスンを読む

 

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