【素襖落】令和元年7月 歌舞伎座(昼の部)
新歌舞伎十八番の内
素襖落(すおうおとし)
狂言の「素襖落」をもとにした「松羽目物」の作品で、九世市川團十郎によって初演されました。
ある大名が、伊勢神宮へ行くことを思い立ち、かねてから一緒に行こうと約束していた叔父のもとへ、太郎冠者(海老蔵)を使いにやります。
叔父の家を訪ねた太郎冠者ですが、叔父は留守で、忙しくて伊勢にも行けないとのこと。伝言を伝えに帰ろうとする太郎冠者を、姫御寮(ひめごりょう/叔父の娘)が引き止め、宴を開くと、酒好きな太郎冠者は飲みすぎてしまいます。
平成10年 [1998] 年5月(歌舞伎座) 写真提供:松竹株式会社
左:三郎吾 7代目新之助(11代目海老蔵)
右:太郎冠者 12世團十郎
太郎冠者は、姫御寮の求めに応じ、那須与一の「扇の的」の話を始めます。
平成10年 [1998] 年5月(歌舞伎座) 写真提供:松竹株式会社
太郎冠者 12世團十郎
扇に描かれているのはコウモリ。コウモリは慶事・幸運の印です。
喜んだ姫御寮は、褒美として太郎冠者に素襖を与えます。素襖とは侍が着るフォーマルウェアのこと。目上の人から与えられるのは名誉なことです。
大名のもとへ帰った太郎冠者ですが、したたかに酔った太郎冠者は、伝言もうまく伝えられず、大切な素襖も落としてしまいます。大名は、太郎冠者が落とした素襖を隠してからかいます。
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▼豆知識▼
・物語
武勇伝や戦の様子を身振り手振りを交えて語って聞かせる演技のこと。立役(男役)が披露する一つの芸で、歌舞伎では様々な演目に「物語」の場面があります。
この作品では太郎冠者が披露する「那須与一 扇の的」の物語が見どころです。
・那須与一 扇の的(なすのよいち おうぎのまと)
源氏と平家の合戦のうち、屋島(今日の香川県)での戦での出来事です。
屋島の戦いのとき、平家は「揺れる舟の上に立てた扇を射よ」と源氏を挑発しました。
源氏の武士である那須与一は、この難しい的を矢で射ることに成功しました。これにより源氏の武運が勝ることを証明し、平家の滅亡につながったといわれます。
源平八島の戦 那須の與市 出版年:嘉永頃(遠浪斎重光画 H013-010 都立中央図書館特別文庫室所蔵)
・能と狂言
「そろり、そろり」でおなじみの狂言は、コミカルなセリフ劇のこと。能と狂言を合わせて「能楽」と呼びます。能楽の公演において、一曲の能が終わったら、次に狂言、その後に次の能、というように、能と狂言は交互に上演されます。
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