THUNDER LESSON !

【外郎売】令和元年7月 歌舞伎座(昼の部)

歌舞伎十八番の内
外郎売
(ういろううり)

「外郎」は薬の名前。1718年、2世市川團十郎が「外郎」を売り歩く人物に扮(ふん)したのが、外郎売が歌舞伎に登場した始まりでした。「外郎売」は歌舞伎十八番の一つに制定されたもののあまり上演されませんでしたが、1980年に12世團十郎(海老蔵の父)が復活上演、その内容が定着して今日にいたります。

今月は、主人公の外郎売を海老蔵が、貴甘坊(きかんぼう)を堀越勸玄が勤めます。「外郎売」に貴甘坊が登場するのは、海老蔵が七代目市川新之助を名乗り初舞台を踏んだとき(1985年)と同じ演出です。

 


昭和60年 [1985] 年5月(歌舞伎座) 写真提供:松竹株式会社
左:外郎売 実は曽我吾郎 12世團十郎
右:貴甘坊 7代目新之助(11代目海老蔵)

 

歌舞伎には、殺された父の敵を討とうとする「曽我兄弟の敵討ち(※1)」を下敷きにしたお話がいくつもあります。外郎売もそんな作品の一つで、兄弟の敵である工藤祐経(くどうすけつね)が宴を開いていると、外郎売が貴甘坊とともにやってきて、薬の効能や由来を聞かせます(この部分を「言い立て」と呼びます)。
実はこの外郎売の正体は、曽我兄弟の弟、曽我五郎。五郎と貴甘坊が敵の工藤に挑もうとする、というストーリーです。

※1:鎌倉時代の出来事。曽我十郎・五郎の兄弟が、父親の敵を討った事件で、武士道の模範とされていた。

 

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▼豆知識

・つらね
歌舞伎十八番の中には、「つらね」と言って、主人公が長台詞を聞かせる場面がよくあります。これは掛詞や洒落などを巧みに用いながら言葉を「連ね」て聞かせる雄弁術で、外郎売の「言い立て」もつらねの一種です。今回は、堀越勸玄がおよそ4分間にわたって早口言葉で聞かせます。

 

・外郎〜薬と菓子
外郎はトウチンコウという漢方薬です。中国で「員外郎(いんがいろう)」という職についていた役人が日本に渡って「外郎家(ういろうけ)」を名乗り、その子孫がトウチンコウの製造販売を行ったため、薬も「外郎」と呼ばれるようになりました。当初は京都にあった外郎家ですが、後に小田原に移り住んで以来、外郎が小田原名物として知られるようになりました。今日でも製造されていますが、小田原の本店で、対面形式でしか購入できない入手困難な薬です。

一方、お菓子の外郎の語源については「色が薬の外郎(黒)に似ていたから」とか、「薬の外郎を飲んだ後に口直しに出されたから」などの説があります。

 

◇ 昼の部『素襖落』のレッスンを読む

◇ 夜の部『星合世十三團 成田千本桜』のレッスンを読む

 

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